ゆきコーチの随想

生涯スポーツ 常友友紀

私の子供は小学1年生からサッカーを始めました。 通っている小学校にスポーツ少年団はあるもののサッカー部はありませんでした。 子供に運動をさせたいだけの私にクラブチームにいれる熱量も料金も時間も釣り合わず とりあえず保育園の延長で遊びサッカーをさせてくれるところに入りました。 小学3年生になると子供の友達が市内の他の小学校のスポーツ少年団サッカー部に 入っていてそこに誘われ流されるがまま入団しました。 他の小学校の方たちと一緒に過ごすのは最初不安でしたが、性格なのでしょう、 子供も私も難なく打ち解けることができました。そして主人もサッカー経験はないものの、 お父さんコーチとして誘われ、週末は家族全員がサッカーに時間を使うようになりました。

スポーツ少年団では、試合に出れる子と出れない子がいました。 出れる子はいつも出れるし、出れない子はいつも出れないのです。 サッカーがしたくて集まった子供たちなのに、試合の日は明らかに運動量に差がありました。 コーチにも順列があり、試合の指揮をとるのはいつも古株のコーチで 「勝ちたい」思いの強い指導者でした。他のコーチは口を出すことができません。 試合に出れない子は1日ベンチに座っているだけ、 出れない子の保護者は自然と参加しない日が多くなりました。

主人はそんな状況に疑問を持ち、ジュニアサッカーのコーチングを学び、 子供が小学4年生の頃、「今通っている小学校でサッカーをできる環境を作ろう!」 とサッカー教室を立ち上げる計画をたてました。 チームではないので他校との試合はないけれど、参加した子供やその保護者、 誰もがスポーツを楽しめる環境をつくりたい、できる限り子供たちの運動機能を高めたい、 そんな思いがありました。

しかし、小学校では運動場のすみ分けでスポーツ少年団と対立しました。 市役所に何度も足を運びましたが、何も解決せず、 市の体質が古く新しいことへの変化が受け入れてもらえないことにいら立ちを覚えました。 結局、小学校の教頭先生の仲裁で、スポーツ少年団が運動場を使用しない日だけ、 という条件で運動場を使えることになりました。

そして、団体として組織の枠組みを作り、道具をそろえ、子供たちが十分に体を動かし、 楽しく続けられるために私たちができることは何か、何度も2人で話し合いました。 チラシを作成して小学校で配布し、参加希望者を募りました。 どれくらいの子供たちが参加してくれるのか全く分かりませんでしたが 結果10人の子供たちと保護者数名が集まってくれました。 そうして始めたサッカー教室は今年で8年目を迎えます。 多少のもめごと、ケガなどいろいろありますが、 協力してくださる保護者の方も増え今は約50人の登録者がいます。

私はサッカー未経験者ですが、 思い切って2年前からサッカーを見よう見まねでやり始めました。 「ヘタでもやってみる」ことは「できないからしない」ことよりはるかにかっこいい ということを子供たちに教えたいと思いました。 毎週子供たちと一緒に同じコートで同じように走ってサッカーをしているので、 お互いうまくいけば褒め合い、失敗しても励まし合い、子供も私も少しずつ上達、 成長していくのがわかります。

「生涯スポーツ」

スポーツには、爽快感や達成感、知的満足感等の精神的な充足や楽しさがあり、 人間的なふれあいを深め、他者との連帯感をもたらすという目的があります。 今の子供たちはゲームなどによる室内遊びの増加、 屋外の遊び場の減少などスポーツをしにくい環境にあります。 国は生涯スポーツを推進していますが、 現実には私の住む市のように対応がまだまだ遅れています。 できる範囲でできる限りの思考と行動で「生涯スポーツ」を広げていくことが 今の私にできる社会貢献であると思い、 体がいうことを聞く限り精一杯サッカーを楽しみたいと思います。

2021年4月吉日